戦火に散った町娘は、敵国の皇太子に奪われて
その声は、不思議と人混みのざわめきを押しのけ、私の耳にも届いた。

ああ――こんな救いのような場面も、この場所にはあるのだ。

わずかだとしても、誰かが優しさを差し伸べてくれることがあるのだ、と。

そして――ついに、私の番がやってきた。

奴隷商人が私の腕を掴み、木の台の上へと引きずり上げる。

鎖が石畳を擦り、甲高い音を響かせた。

「こいつは上玉だ!顔も体も、文句なしだ!高くつくぞ!」

商人の声に、周囲がざわめく。

「100出そう!」

「いや、200だ!」

次々と値が吊り上がっていく。

まるで人を買うことを娯楽のように楽しんでいるかのようだった。

「230!」

「250は?」

銀貨の数字が飛び交うたび、胸の奥が冷たく締めつけられる。

値段が上がれば上がるほど、私の“人としての価値”が削られていくような気がした。
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