戦火に散った町娘は、敵国の皇太子に奪われて
「なんと! 500で売れました!」

声高に叫ぶ商人に、周囲から驚きと羨望のざわめきが上がった。

ガチャリ――鎖が外される。

足首に食い込んでいた冷たい鉄の感触が消えた瞬間、足がふらつく。

「たんまり可愛がってもらえよ」

商人が口の端を歪めて吐き捨てるように言い、私の背中を押した。

熱気と視線の渦の中、私はゆっくりと台の上から降りる。

一歩ごとに、鎖のない足取りが信じられなかった。

やがて辿り着いたのは、漆黒の髪と蒼い瞳を持つ男――先頭の騎馬の人物の前。

間近で見ると、その存在感は息を呑むほど圧倒的だった。

「……あの、私を買ってくださって、ありがとうございました」

震える声でそう告げると、彼の瞳がわずかに細まり、何かを見極めるように私を見つめた。

「馬に乗れるか?」

突然の問いに、私は瞬きを繰り返した。

「えっ?」

すぐに首を横に振る。馬など、遠くから眺めたことしかない。

< 12 / 83 >

この作品をシェア

pagetop