戦火に散った町娘は、敵国の皇太子に奪われて
すると彼は、ためらうことなく馬を降り、私の手を取った。

温かくも力強い掌が、私を軽々と持ち上げる。

そして、そのまま馬の背へと乗せた。

「え……」

戸惑う間もなく、彼は私の後ろから自らも馬に跨る。

背中に触れる鎧越しの硬さと、包み込むような腕の重み。

心臓が早鐘を打つ。

「名前は?」

低く響く声に、思わず背筋が伸びる。

「イレーネ……です。」

「俺は、アレクシオン。アレクとでも呼んでくれ。」

その名を告げる口調は、威厳と同時に不思議な温かみを帯びていた。

次の瞬間、馬が地面を蹴り、勢いよく走り出す。

風が頬を打ち、視界が揺れる。

「あの……どこへ行くのですか?」

恐る恐る問いかけると、彼は短く囁いた。

「しっ――まだ商人が見ている」

そして、何事もないように私の腰に回した腕を強く引き寄せる。

鎧越しに感じる熱が、私の鼓動をさらに速めた。
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