戦火に散った町娘は、敵国の皇太子に奪われて
どれくらい走っただろう。

馬の蹄の音が次第に静かになり、気づけば風の匂いが変わっていた。

たぶん、もう町の外れまで来ている。

アレクは馬を止め、私をそっと抱き下ろした。

足が地面に触れると、まだ揺れるような感覚が残っている。

「ここですか?」

周囲を見回すと、林と小道しかない静かな場所だった。

アレクは答えず、私の両手をしっかりと握った。

その掌は大きく、熱を帯びている。

「ここなら、一人生きていけるだろう。」

そう言って、懐から小袋を取り出す。

中には数枚の銀貨が入っていた。

それを私の手に押し込むように渡す。

「あの……私を奴隷にするんじゃ……」

恐る恐る問いかけると、アレクはわずかに眉を動かし、短く答えた。

「そんなつもりはない。」

驚きに息が止まる。

だって――500もの大金を支払ってまで私を買ったのに。
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