戦火に散った町娘は、敵国の皇太子に奪われて

第2章 予期せぬ自由

近くに止まっていた馬車へ駆け寄る。

「この銀貨で、あの人たちを追って。」

さっき握らされた銀貨を従者に差し出すと、彼は力強くうなずいた。

「はい。」

掛け声と共に馬車が揺れ、車輪が石畳を叩く音が響く。

私の視線は、ただ一つの背中を追っていた。

――アレクシオン、その名を忘れることはない。

夜になると、アレクたちは国境近くの町に到着した。

街道沿いの宿場町は、夜でも行き交う人影が多く、露店からは香辛料や焼き肉の匂いが漂ってくる。

鎧を外した兵たちの笑い声や、酒場の喧騒が耳に届き、昼間の緊張が嘘のように活気づいていた。

「ありがとう。」

馬車から降りた私は、深く頭を下げた。

アレクはもう宿の中へと消えていき、その背中が見えなくなる。

自分も近くに宿を取ろうと、通り沿いで一番安そうな宿屋の扉を開けた。

中は薄暗く、油ランプの灯りが心許なく揺れている。
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