戦火に散った町娘は、敵国の皇太子に奪われて
カウンターの奥に立つ宿の主人は、無精髭を生やし、目つきが鋭かった。

「一人だと100だね。」

ぶっきらぼうな声に、思わず首を傾げる。

「でも、外の看板には80って――」

「ありゃ二人からの値段だ。」

主人は面倒くさそうに手を振ると、じろりとこちらを見上から下まで値踏みするように視線を走らせた。

「……商売かい?」

「えっ?」

唐突な言葉に目を瞬かせる。

「男を連れ込むんなら、他所に行ってくれ。」

ぞっとするような口調。

意味を悟った瞬間、頬が熱くなり、同時に嫌悪感が背筋を走った。

首を振るだけで精一杯だった。

私は重い足取りで宿を出た。

夜風が頬を撫で、少し冷たく感じる。

他の宿をいくつか覗いてみたが、どこも先ほどの宿よりも高い。

持っている銀貨では、今夜泊まれる場所はなさそうだった。

……今日は野宿するしかないのだろうか。
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