戦火に散った町娘は、敵国の皇太子に奪われて
胸の奥に小さな不安が広がる。

その時だった。

近くの店の扉が開き、中から一人の男が出てきた。

「はー……」

大きく欠伸をしながら、店の脇道に立ち止まり、煙草に火をつける。

紫煙が夜の闇にゆっくりと溶けていく。

ふと、その男がこちらに気づき、目を細めた。

「あれ? さっきの人だ。」

思わず瞬きを繰り返す私を見て、彼は煙草の火を靴で消した。

そして、少し首を傾げながら言った。

「皇太子殿下が助けた人ですよね。」

「……皇太子、殿下?」

耳にした言葉をそのまま繰り返す。

あの人――アレクが?

まさか……そんなに偉い人だったなんて――!

頭の中が混乱し、心臓が一気に早鐘を打ち始めた。

「どうしてここに? あなたもこの国へ?」

ぐいぐいと距離を詰められ、私は思わず一歩、後ろへ下がった。

「ああ、ごめんなさい。」

男は慌てて手を上げると、柔らかな笑みを浮かべた。

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