戦火に散った町娘は、敵国の皇太子に奪われて
その言葉に、胸が熱くなる。

この人は、私をただ欲するのではなく、大切にしようとしてくれている――。

額に柔らかな口づけが落とされる。

そして、アレクは私を包み込むように抱いたまま、ゆっくりと横たわった。

「アレク……」

名前を呼ぶ声は、自然と甘く震える。

「眠れ。ずっと側にいるから。」

その穏やかな声が、深い安心感となって心に染み込む。

瞼が重くなり、温もりに包まれながら、私は静かに眠りへと落ちていった。

翌朝、目を覚ますと、アレクの姿はもう隣になかった。

シーツの温もりだけが、昨夜のぬくもりを思い出させる。

顔を洗い、部屋を出ると、宿の前ではすでに馬が並び、アレクたちが出発の準備をしていた。

鎧の音、蹄の響き、朝の澄んだ空気――すべてが新しい一日の始まりを告げている。

「起きたか、お姫様。」

からかうような声とともに、アレクが近づき、私の頭に手を置いた。
< 28 / 83 >

この作品をシェア

pagetop