戦火に散った町娘は、敵国の皇太子に奪われて
しばらくして、外の轟音が嘘のように消えた。

耳に届くのは、かすかな風の音だけ。

人々の怒号も、剣戟の響きも、もう聞こえない。

息を殺していた私は、ゆっくりと藁を払い落とした。

埃が舞い、かすかに乾いた草の匂いが鼻をくすぐる。

そっと立ち上がり、小屋の扉を開ける。

……誰もいない。

焼け焦げた木の残骸が転がるだけで、あの喧騒は跡形もなかった。

「助かった…の?」

胸の奥に小さな希望が芽生える。

だがすぐに別の想いが押し寄せた。

お兄ちゃんは――?

ハッとして左右を見回す。

どこにもあの背中はない。

声を出そうか迷った、その瞬間。

「まだいたのか」

背後から、低く湿った声が落ちた。

同時に、がっしりとした腕が私の体を羽交い締めにする。

「きゃああ!いやああ!殺さないで!」

必死にもがくが、相手の力は岩のように硬く、びくともしない。
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