戦火に散った町娘は、敵国の皇太子に奪われて
店先から、路地から、気さくに声が飛び交う。

市場の老商人が頭を下げ、パン屋の娘が手を振る。

アレクは口元をわずかに緩め、小さく手を上げて応えた。

「アレクは、民衆に慕われているのね。」

私がそう言うと、背後から低く短い返事が返ってくる。

「……そうかもな。」

控えめな言葉の中にも、誇りと責任の重みが感じられた。

その時、通りの端で遊んでいた子供が目を丸くして叫んだ。

「あれ? 皇太子殿下、綺麗な人を連れてるよ!」

周りの大人たちがくすくす笑い、私の頬が熱くなる。

それでも、アレクの腕が変わらず私を支えていることが、何より心強かった。

城門をくぐった瞬間、石畳に響く蹄の音がゆっくりと止まった。

馬を降りる私の耳に、やや硬い声が届く。

「この方をどうするおつもりですか?」

出迎えの役人らしい人物が、アレクに問いかけていた。

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