戦火に散った町娘は、敵国の皇太子に奪われて
「まだ決めていない。」

短く返すアレクの声。

その言葉に、胸の奥がきゅっと締めつけられる。

――私は、これからどうなるのだろう。

そんな私の不安を見逃さなかったのは、カリムだった。

「皇太子殿下付の侍女にしては?」

間髪入れずにそう提案する。

アレクは一瞬だけ私を見て、すぐに頷いた。

「ああ、そうしてくれ。」

カリムに視線を向けると、彼は片目をつむってウィンクを送ってきた。

――そうか。私がアレクのそばにいられるようにしてくれたのね。

胸の奥がじんわりと温かくなった。

「さあ、ここが我が城だ。」

アレクの声に促され、城門をくぐる。

中に足を踏み入れた瞬間、息を呑んだ。

磨き上げられた大理石の床に、壁一面の繊細な彫刻。

黄金の燭台が等間隔に並び、色鮮やかなタペストリーが風に揺れている。

戦火に追われ、荒れた町しか知らなかった私には、夢の中のような光景だった。
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