戦火に散った町娘は、敵国の皇太子に奪われて
私はウソをつくことに決めた。

「落ちぶれた家だから、言ってもたぶん分からないわ。」

そう言えば、町娘だったことも悟られずに済む。

ラディアはあっさり頷き、けれど意味ありげな笑みを浮かべた。

「そう。でも…きっといい血筋だったのでしょうね。」

「えっ?」思わず顔を上げる。

ラディアの視線は、私の髪や瞳の色、頬の線までを静かになぞっていた。

「あなたほど美しい人は、久しぶりに見るわ。」

胸の奥がくすぐったくなり、どうも…と小さく頭を下げた。

――美しい。

そんなふうに言われたのは、いつ以来だろう。

町を出るまで、自分がそんな目で見られているなんて知らなかった。

ただの、誰も気に留めない少女だと思っていたのに。

そして夜になると、ラディアは小さく畳まれた衣を私に差し出した。

「これは?」

「お勤めの時に着る物よ。濡れてもいいようにね。」

布は薄く、肌にぴたりと沿いそうだった。
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