戦火に散った町娘は、敵国の皇太子に奪われて
足が、扉の前で止まった。

振り返る勇気はなかったが、湯気の向こうで何かが始まろうとしている気配だけが、背中を灼いた。

そっと、ほんのわずかに扉を開けた。

湯気の向こう――ラディアがアレクに唇を重ねていた。

「今夜は私が癒して差し上げます。」

囁くような声とともに、ラディアはその膝で彼の腰を挟み、ゆっくりと跨がった。

「ああ……」

アレクは何も言わず、ただ彼女の快楽を受け入れている。

「いい……皇太子殿下ぁ……」

濡れた黒髪が揺れ、湯面が波打つ。

ラディアはむしろ、この瞬間を心から楽しんでいるようだった。

「ラディア……お前は本当にいい侍女だ。」

アレクの瞳が、熱に濡れて彼女を見つめる――まるで、私など最初から存在していないかのように。

喉の奥が詰まる。

胸の奥が、きつく痛む。

私は扉を閉めることも忘れ、足元も覚束ないまま自分の部屋へと歩き出していた。

まるで逃げるように。
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