戦火に散った町娘は、敵国の皇太子に奪われて
「私はっ……皇太子殿下のお情けを、頂けるのでしょうか。」

喉の奥から、掠れた声が零れた。

あの人が欲しい。他の女を抱く姿なんて――耐えられない。

マリアは驚くことなく、そっと私を抱き寄せた。

その腕は温かく、幼い頃に母に抱き締められた時の記憶がふと蘇る。

「イレーネが、皇太子殿下を追って城まで来たと聞いた時から……なんとなく、あなたの心は分かっていたわ。」

その言葉に、余計に涙があふれた。

胸の奥に隠していた想いが、もう抑えられない。

「皇太子殿下に、恋しているのね。」

マリアの静かな問いかけに、私はこくりと頷いた。

――そうだ。

私は、あの人に恋をしている。

ただの憧れでも感謝でもない。

名前を呼ばれるたび、触れられるたび、心も体も熱くなる――恋だ。

「もしイレーネが殿下のお情けを頂いてお子を成しても……その子は愛人の子として処理されるわ。」

胸が、ぎゅうっと締め付けられた。
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