戦火に散った町娘は、敵国の皇太子に奪われて
「でもラディアは違う。貴族出身だから、皇位は継げなくても、皇子として扱われるのよ。」

そこには、埋めようのない落差があった。

どれだけ心を尽くしても、出自ひとつで覆せない現実。

「忘れなさい。あなたの将来のためにも。」

マリアの声は、優しさよりも現実の重みを帯びていた。

「時期が来たら、私が結婚相手を紹介するから。」

そう言い残し、マリアは静かに部屋を出て行った。

扉が閉まる音が、まるで永遠の別れのように響く。

――なぜ、ここに来てしまったのだろう。

恋を叶えるために足を踏み入れたはずの城が、今はただ、出口の見えない牢のように思えた。

離れようと思っても、私は専属の侍女だ。

常に殿下の傍に仕える役目を放棄することは許されない。

辞めたくても、街へ戻るにはお金が必要で、一人では生きていけない。

ならば、ある程度の資金が溜まるまで――ここに留まるしかない。
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