戦火に散った町娘は、敵国の皇太子に奪われて
「倒れたところも、男らしくて……目が離せませんでした。」

一瞬の沈黙のあと、アレクは肩を震わせ、隣にいたカリムと一緒に笑った。

その笑い声はあまりに優しくて、私の心をさらに深く揺らした。

「倒れているのに男らしいって……どんな解釈をしているんだ?」

アレクが、汗の残る首筋を拭いながら私を見る。

つまり——あなたに恋をしているからです。

喉まで出かかった言葉を、私は飲み込んだ。

「イレーネは……サゾなのか?」

「はあっ?」

思わず目を吊り上げる。

アレクはその反応すら面白そうに、柔らかく笑った。

その笑顔が、鍛錬場の陽光よりも温かい。

「さては、男を倒したいんだろう?」

——ええ。できることなら、あなたを押し倒してみたい。

そんな危ない妄想が一瞬で頭をよぎる。

「逆に、倒れている男に興味があるのかもな。」

横からカリムが涼しい顔で口を挟む。

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