戦火に散った町娘は、敵国の皇太子に奪われて

第4章 近づく心

その夜はどうしても眠れなかった。

ベッドに横たわっても目が冴えて、胸の奥がざわざわと波立つ。

思い切って外に出ると、中庭には月明かりに照らされた花々が静かに揺れていた。

白や紫の小さな花弁が夜風に踊り、吐息のように命を感じさせる。

「綺麗ね……」思わず手を伸ばし、一輪をそっと摘む。

掌にのせると、か細い茎が頼りなげに揺れた。

「あなた達も一生懸命に生きているんだものね。」

口にすると、胸の奥が温かくなる。

見上げれば、空には無数の星々が瞬いていた。

どこまでも広がるその輝きに、自分がいかに小さな存在かを思い知らされる。

「星に比べたら、私なんて……」

ぽつりと呟く。けれど花も星も、誰かの目に映れば意味を持つ。

そう思った瞬間、ほんの少しだけ胸が軽くなった。

夜風に揺れる髪を押さえながら、私はそっと花を胸に抱きしめた。
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