戦火に散った町娘は、敵国の皇太子に奪われて
その時だった。
「大丈夫ですか? 殿下!」
騎士の慌てた声が響いた。振り返ると、アレクが壁際に下がり、剣を手放していた。
「アレク!」私は駆け寄る。
「……ああ、大丈夫だ。」
彼は努めて平静を装っていたが、右手の指先から赤い血が滲み出ていた。
「どうしたの?」
息を呑んで問いかけると、アレクは視線を逸らし「かすり傷だ」と言う。
けれど、その声が少し震えていた。
「大変……!」
私は慌ててポケットから、いつも忍ばせていた小さなコットンとテープを取り出す。
そっと彼の手を取ると、滲む血に心が痛んだ。
「こんなに大げさにしなくてもいいのに。」
アレクが困ったように笑う。
「いいえ。黴菌が入るといけませんから。」
口ではそう言いながら、胸の奥はきしむほどに切なかった。
彼が傷を負うたびに、心がちぎれてしまいそうになる――。
「大丈夫ですか? 殿下!」
騎士の慌てた声が響いた。振り返ると、アレクが壁際に下がり、剣を手放していた。
「アレク!」私は駆け寄る。
「……ああ、大丈夫だ。」
彼は努めて平静を装っていたが、右手の指先から赤い血が滲み出ていた。
「どうしたの?」
息を呑んで問いかけると、アレクは視線を逸らし「かすり傷だ」と言う。
けれど、その声が少し震えていた。
「大変……!」
私は慌ててポケットから、いつも忍ばせていた小さなコットンとテープを取り出す。
そっと彼の手を取ると、滲む血に心が痛んだ。
「こんなに大げさにしなくてもいいのに。」
アレクが困ったように笑う。
「いいえ。黴菌が入るといけませんから。」
口ではそう言いながら、胸の奥はきしむほどに切なかった。
彼が傷を負うたびに、心がちぎれてしまいそうになる――。