戦火に散った町娘は、敵国の皇太子に奪われて
「えっ?俺が?」

アレクは明らかに買う気などなかった。

「いいから、早く!」

私は恥ずかしくて振り返ることもできない。

その時、店の主人が笑顔で声を掛けてきた。

「殿下、女性に贈るのでしたら真珠が人気です。」

差し出されたネックレスを、アレクは一瞬ためらい――それでも手に取った。

「これを貰おう。」
「はい!」

銀貨を支払うと、アレクは振り返って私に差し出す。

「私に?」
「ああ。」

胸が高鳴る。さっきまで買う気すらなかったはずなのに。

私はそっと首に掛け、髪を整えながら彼を見上げた。

「似合う?」
「……ああ、似合う。」

その声は、わずかに掠れていた。

耳まで赤く染まっているのに、アレクは必死に気づかれまいと微笑んでいる。

――真珠よりも、この瞬間こそが私の宝物。

市場のざわめきの中、「殿下が贈り物を……!」という囁きが耳に届く。

頬が熱くなる。
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