戦火に散った町娘は、敵国の皇太子に奪われて
考えが沈みかけた時、背中をドンと叩かれた。

「イレーネ!」

カリムが笑顔で私を見る。

わざとらしいほど明るい声に、心臓が跳ねた。

まるで「気にするな」と言っているみたいに。

そして視察は、街の中心へと進んでいった。

両脇の通りは賑やかで、人々の笑い声と香ばしい匂いがあふれている。

「結構、子供が多いのね。」

私が目を向けると、小さな子供たちが駆け回り、石畳に影を踊らせていた。

その中の一人が、こちらに駆け寄って来る。

「……皇太子殿下?」

あどけない声に、アレクは少し驚いたように目を瞬かせ、それから柔らかく微笑んだ。

そして迷いなく、その子供を抱き上げる。

子供は嬉しそうに笑い、周囲の人々まで温かい表情になる。

「どうしてあんな小さな子供まで、アレクを知っているの?」

私は隣のカリムに囁いた。

「国王と並べて写真を飾る家が多いんです。」
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