戦火に散った町娘は、敵国の皇太子に奪われて
けれど私はすぐに首を横に振った。

「……だめ。私は身分が違うから。」

そう。アレクの侍女として近くに仕えることはできても、同じ立場で隣に立つことはできない。

彼に微笑みかけることさえ、許されていないのだ。

遠くで子供を抱くアレクの姿は、まるで未来の王の象徴。

優しい笑顔に見惚れながらも、胸の奥では痛みが広がっていた。

その時、アレクが子供を抱いたまま私の方へ歩み寄ってきた。

「イレーネ、抱いてみるか?」

差し出された小さな体をおそるおそる受け取る。

思ったより軽くて、胸の奥がじんと温かくなった。

「お姉ちゃん、皇太子殿下と同じ匂いがする。」

子供が無邪気に言い、私は思わずドキッとする。そういえば、同じ石鹸を使っているのだ。

「いい匂いする?」

「うん、いい匂い。」

答える声はあくび混じりで、ぐてっと私に身を預けてくる。

可愛くてたまらず、私は微笑んだ。
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