戦火に散った町娘は、敵国の皇太子に奪われて
「……そうしているのを見ると、身分なんてどうでもよくなるな。」

不意にアレクが低く言った。驚いて顔を上げると、彼はまっすぐに私を見ていた。

「俺はその人の心を見るよ。」

優しいまなざしに胸が震える。

もし、このまま――子供を囲んで、三人で穏やかな時間を過ごせたら。

そんな叶わない夢が、ふと胸に浮かんでしまうのだ。


そして私は、鍛錬場に足を運ぶのが日課になっていた。

アレクは暇さえあればそこで剣を振っている。

普段は公務で顔を合わせることさえ難しい彼と、ここなら言葉を交わせるからだ。

たとえ十分、十五分でも――その時間は、私にとって宝石のように大切だった。

眩しい日差しの下、剣を振るうアレクの姿は凛々しく、息をするのも忘れるほど見惚れてしまう。

流れる汗、無駄のない動き、真剣な横顔。

彼が剣を振り下ろすたび、胸の鼓動まで揺さぶられるようだった。
< 57 / 83 >

この作品をシェア

pagetop