戦火に散った町娘は、敵国の皇太子に奪われて
差し出された花束を受け取った瞬間、爽やかな香りがふわりと鼻をくすぐった。

粗末な花かもしれない。

それでも、彼が自分のために摘んでくれたという事実だけで、胸がいっぱいになる。

「ありがとう、アレク。」

唇からこぼれた言葉は、いつもよりも少し震えていた。

嬉しい。アレクが私のために、わざわざ花を摘んでくれたなんて。

胸の奥がじんわりと熱を帯びて、涙が出そうになる。

するとアレクは花束の中から一本を抜き取り、器用に茎を短く切ると、私の髪にそっと挿してくれた。

「似合う。」

その言葉に思わず顔を上げる。

視線が絡み合い、まるで時間が止まったように動けなくなった。

気がつけば、アレクの顔がゆっくりと近づいてくる。

息遣いが混ざり合い、次の瞬間、唇が重なった。

優しく、けれど熱を帯びた口づけ。

心臓が壊れそうなくらいに高鳴る。
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