戦火に散った町娘は、敵国の皇太子に奪われて
辿り着いたのは、城下の市場だった。

普段なら魚や香辛料の匂いが漂うはずの場所が、今日はまるで別の顔をしていた。

人だかりの中心には木製の台が置かれ、その上に奴隷商人が立っている。

「よし、一人一人売りさばいていくか!」

声は高らかで、残酷なほど陽気だった。

一人目の女が引きずり出され、鎖が無慈悲に鳴る。

「さあさあ!買った買った!」

野次馬のように集まった男たちの視線が、値踏みするように女の体を舐め回す。

「10で買おう!」

誰かが叫び、商人が笑ってうなずく。

銀貨の音が鳴り、女は買い手に引き渡されていった。

そのやり取りが次々と繰り返される。

声を上げて泣く者、ただ呆然と足を引きずられる者――

ああ、みんな、これからどうなるのだろう。

胸の奥に重く、黒い不安が沈んでいく。
< 6 / 83 >

この作品をシェア

pagetop