戦火に散った町娘は、敵国の皇太子に奪われて

第5章 揺れる想い

そして城では舞踏会が開かれた。

煌びやかなシャンデリアの下、楽団の奏でる音楽に合わせ、貴族たちが優雅に舞う。

この日ばかりは、アレクも剣を置き、騎士ではなく皇子としての顔を見せる。

深い色の礼服に身を包んだその姿は、鍛錬場で汗を流していた彼とはまるで別人のようで、思わず息を呑んだ。

――こんなに紳士的なアレクを見たのは初めてだ。

その時、会場の視線を集めて入ってきたのは、伯爵令嬢ラディア。

彼女は周囲の令嬢たちに堂々と告げていた。

「でも、踊るのはアレク殿下とだけ。」

その言葉に、他の令嬢たちも苦笑しながら距離を取る。

どうやら彼女は、アレクを独り占めするつもりらしい。

胸の奥にざらつく感情が広がるのを感じた。――けれど私には関係ない。私はただの一介の侍女にすぎないのだから。

「イレーネ!」

背後から声をかけられて振り返ると、マリアが慌ただしく近づいてきた。
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