戦火に散った町娘は、敵国の皇太子に奪われて
「メイドが足りないの。あなたも手伝って!」

「えっ……!」

驚く間もなく、私は黒い制服を着せられ、エプロンを結ばれる。

「大丈夫。シャンパンを運ぶだけだから。」

そう言って微笑むマリアに押し出され、私は煌めく舞踏会場の片隅に立たされていた。

手にした銀盆がかすかに震える。

目の前では、アレクがラディアに手を差し伸べ、舞踏の輪へと誘っていく。

胸の奥で、静かな痛みがじわじわと広がっていった。

しばらくして、楽団の音色が変わり、舞踏の輪が広がる。

その中央に立ったのは――アレク。

そして彼の隣には、薄青のドレスに身を包んだ美しい姫君。

「……あれは隣国のミーシャ姫よ。」

誰かの囁きが耳に届く。

「お二人とも、本当に優雅ねえ。」

「これを機に婚姻があるのかしら。」

貴婦人たちの噂話が、冷たい風のように胸を突き抜けた。
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