戦火に散った町娘は、敵国の皇太子に奪われて
アレクとミーシャ姫が見事な調べに合わせて舞う姿は、たしかに絵のように美しかった。

彼が笑えば彼女も笑い、彼女が舞えば彼が導く。

会場の憧れの視線はすべて二人に注がれている。

――その光景を、私は給仕の隅からただ見ていることしかできなかった。

「シャンパン、頂ける?」

はっとして振り向くと、すぐ傍らにラディアが立っていた。

白磁のような肌に赤い唇。

伯爵令嬢にふさわしい気品をまとって、杯を差し出してくる。

「お似合いね、二人とも。」

彼女は舞踏を続けるアレクとミーシャ姫を、冷静に見つめていた。

嫉妬とも憧れともつかない光を宿したその瞳に、思わず息を呑む。

「……黙っているの?」

不意に問いかけられ、私は答えられなかった。

ラディアはふっと微笑み、静かに言う。

「だって私はただの伯爵令嬢ですもの。」

そう言って、彼女は私の手にシャンパンの杯を押しつけるように渡した。

冷たいガラス越しに、私の指先が小さく震えた。
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