戦火に散った町娘は、敵国の皇太子に奪われて
一曲の終わりを告げる旋律が静まったその時だった。

アレクの金の瞳が、ふと私を射抜いた。

「……えっ? メイド?」

微かに驚いた声が、唇の形から読み取れる。

その瞬間、周囲にいた令嬢たちの視線が一斉に突き刺さった。

冷たく、鋭く、まるで「身の程を弁えろ」と言われているように。

たとえ皇太子殿下付きの侍女であろうと――舞踏会で、しかも殿下の前に姿を現すなど言語道断だった。

胸が締めつけられ、呼吸が苦しい。

私は震える手でトレーをテーブルに置くと、その場を離れた。

視線から逃れるように、煌びやかな大広間を飛び出す。

冷たい夜風が、頬を撫でた。

「私は……ここでは踊れない。」

自分の声が、やけに遠く響いた。

煌びやかな世界の真ん中に立つ彼と、給仕服のまま隅に立つ私。

アレクとは――住む世界が違うのだ。
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