戦火に散った町娘は、敵国の皇太子に奪われて
「やだあ……」

情けない声が漏れる。

「そんなグチグチ言ってるより、ましだろ!」

彼の言葉は厳しいけれど、叱っているのではなく、背中を押すように響いた。

次の瞬間、カリムは私を抱き寄せた。

広い胸に顔を押し付けられ、温かさに包まれる。

「それで……誰かに側にいてもらいたかったら、俺が側にいるから。」

その一言に、胸の奥がじんと熱くなった。

カリムの腕は強くて優しい。孤独に沈んでいた心が、少しずつ溶けていく。

「……うん。」

小さく頷いた。

でも――正直に言うと、この気持ちはやっぱり。

誰でもない。アレクに知ってほしい。

舞踏会が終盤を迎える頃、煌びやかな大広間にはまだ音楽が流れていた。

アレクは最後の曲を、ずっとミーシャ姫と踊っていた。

彼女は金糸のドレスを翻しながら、しなやかにアレクに身を預け、何か囁いては楽しそうに微笑んでいた。
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