戦火に散った町娘は、敵国の皇太子に奪われて
「私と踊って頂けますか。お嬢さん。」

低く甘い声に胸が熱くなる。恐る恐る、その手に自分の手を重ねた。

「……はい。」

彼の大きな手が私を導く。

部屋の中で、誰にも邪魔されない二人だけの舞踏会が始まった。

「最初はワルツにしよう。」

アレクが低い声で旋律を口ずさむ。

私は慌てて合わせ、二人の声が重なって即席の音楽になる。

「上手い、上手い。さすが近くで見ていただけのことはある。」

優しく見つめられると、それ以上ステップを踏めなくて、胸がいっぱいになった。

「次はロンド。」

軽やかなリズムに導かれて、私はスカートの裾を翻す。

アレクのリードはあまりに自然で、本当に舞踏会の真ん中にいる気がした。

そして彼が囁く。

「最後は……チーク。」

ぐっと近づいた体温に心臓が跳ね上がる。

肩に添えられた大きな手、耳元で感じる息遣い。

音楽もない静かな部屋で、二人の鼓動だけが響いていた。
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