戦火に散った町娘は、敵国の皇太子に奪われて
「ミーシャ姫とも、チークを?」

「……ああ。まさか他の男とチークを踊らせる訳にはいかないだろう。」

頬が近くて恥ずかしい。胸の奥がじんじんと熱を帯びていく。

「皇子様って、大変なのね。」

「はは……そうだな。」

耳元で落ちる低い笑い声に、心臓が跳ねた。

音楽も灯りも遠くかすんでいく。

まるで、世界に二人しかいないような錯覚。

今伝えなければ、一生言えない気がした。

「好きです。」

アレクの足が止まる。

「アレクのことが好き。」

勇気を振り絞って、私は彼の胸に飛び込むように抱きしめた。

「何度も諦めようと思った。身分が違うから。でも、どうしてもあなたじゃなきゃダメなの。」

言葉が震えて、胸の奥から零れ落ちる。

するとアレクがスーッと私の顔を見つめた。

その真剣な眼差しに、息が詰まる。

「アレク……」

けれど、彼は何も言ってくれない。
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