戦火に散った町娘は、敵国の皇太子に奪われて

6章 お風呂場でも離れられない二人

翌朝、私はアレクの腕の中で目を覚ました。

「アレク……」

寝顔を見つめながら、そっと頬に触れる。

信じられない――まさか彼と、一夜を共にする日が来るなんて。

「ん……?」

アレクがゆっくりと目を開け、私に視線を落とした。

「おはよう、アレク。」

「おはよう、イレーネ。」

その優しい微笑みに、胸がじんわりと温かくなる。

これが、幸せというものなのだろうか。

「体は大丈夫か?」

「はい。」

「初めてなのに、無理をさせてしまったな……」

申し訳なさそうに言うアレクに、思わず首を振る。

彼の腕が、そっと私を抱き寄せる。

強さと優しさに包まれて、私は思った。

――たとえ夢でもかまわない。ずっとこの朝が続いてほしい。

「あの……そろそろ、起きないと。」

小さくつぶやいて身体を起こそうとした瞬間、アレクの腕が私を引き戻した。
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