戦火に散った町娘は、敵国の皇太子に奪われて
「今日ぐらい、一緒にいてもいいじゃないか。」

囁くように言いながら、頬に柔らかなキスが落ちる。

「アレク……」

胸の奥が甘く痺れる。

アレクって、こんなに優しくて、甘い人だっただろうか。

「昨日のこと、後悔していないか?」

耳元にかかる低い声。吐息すら熱を帯びている。

私は首を横に振った。

「……私も触れたかったから。」

そう言うと、アレクの瞳がとろけるように細められ、また強く抱きしめられた。

「幸せだよ、イレーネ。」

彼の声が胸に深く響く。

すると、扉の向こうからマリアの声が響いた。

「朝食をお持ちしました。」

ドキッとする。

マリアにはあれほど「諦めなさい」と言われていたのに……。

私は慌てて布団を引き上げ、頭まで隠れてしまった。

けれど扉を開けたマリアの声は、どこか弾んでいた。

「まあ……アレク殿下がご自室で朝食を摂られるなんて、初めてのことですわ。」
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