戦火に散った町娘は、敵国の皇太子に奪われて
やがて、その子の番が回ってきた。

まだ年若く、小柄で華奢な体が鎖の重みで揺れている。

奴隷商人が木の台の上で声を張り上げた。

「さあ、この娘だ!どうだ、買わねえか!」

一瞬の沈黙のあと、柔らかな声が響いた。

「50払おう。」

振り向くと、人混みの中から一人の若い男が手を上げていた。

日に焼けた穏やかな顔立ちで、その瞳には欲望よりも優しさが宿っているように見えた。

「他には?」

奴隷商人が視線を巡らすが、誰も手を挙げない。

「決まりだな。」

商人が満足げに笑い、鎖を外す。

その子は男のもとへ歩き出した――いや、歩かされた。

そして、現実が重く胸にのしかかる。

たとえ相手が優しそうに見えても、売られた事実は変わらない。

「う……」

その子の瞳に涙が溢れた瞬間、男は静かに彼女を抱きしめた。

「泣かないで。…大切にするから。」
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