戦火に散った町娘は、敵国の皇太子に奪われて
湯に浸かると、アレクが隣に腰を下ろした。

裸の肌が触れ合い、心臓が大きな音を立てる。

「こうして入ると……夫婦みたいだな。」

アレクの言葉に、思わず顔を上げてしまう。

真剣な瞳に見つめられ、胸がいっぱいになった。

「イレーネ。ずっと俺の側にいてくれるか?」

その問いに、私は力強く頷いた。

するとアレクは、私をそっと湯船から出した。

「髪を洗ってやろう。」

「えっ! だ、大丈夫ですから!」

「いいから、いいから。」

皇太子殿下なのに、まるで私の召使いみたいに。

アレクは私の後ろに回り、指先で丁寧に髪を梳いていく。

ごしごしと力強いわけではなく、撫でるように優しく。

泡立つ感触と彼の指先の温もりが、頭皮から背筋へと甘く伝わっていく。

「気持ちいいか?」

耳元に落ちる低い声。

「……はい。」

頬が熱くなる。洗ってもらっているはずなのに、全身が蕩けていくようだった。
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