私の居場所は、先生の隣!
 「陽菜、最近、テストの点が下がってきてるんじゃない」

 やっと一日が終わって家に帰った途端、お母さんはいきなりそんな事を言ってきた。

 確かに国語や英語とか、下がってる科目もあるけど、理科や数学は、前よりずっと上がってる。そんなに悪くないはず。

 頑張って勉強してる。

 何の為か分からないけど。




 仕事から帰ってきたお父さんも、夕食のとき、

 「スマホばかり見て、何考えてるんだ?」

 「……別に」

 ボソっと答えたら、

 「なんでそんなにつまらなそうな顔をしてるんだ?」

 「そんなことない」

 「中学にもなって、そんな調子じゃやっていけないぞ」

 「…………」

 私は持っていた茶碗をドン!と音をたててテーブル置いた。

 「陽菜! 行儀が悪い!」

 「母さんに聞いたが、テストの点が落ちてるんだってな。スマホが原因なら、やめ……」

 「もういい!」

 私は逃げるように部屋に走っていく。

 背中ごしに何か言ってたけど、私は耳を塞いでた。

 部屋の戸をしめる。

 鍵はかけられない。

 スマホなんて、眠るまでのちょっとの時間、動画を見る程度。

 猫とかの動画を見てるとほっこりする。

 それも駄目だって言うの?

 皆の言う事を素直に聞いてただけなのに、それでも段々と圧迫されてくる。

 何処にも行き場がない。

 「私‥‥」

 机の上に置いてある通学カバンのふたが開いて、中からペンケースが出ている。

 カバンだけ下におろして、ペンケースを掴んだとき、私はフと思い立って、ケースからケシゴムを取りだす。

 あの日――授業中に落として、どうしようか迷っている間に、皆川先生が黙って拾ってくれた。

 私が泣いてた時……その目は確かに私に向いていた。

 ……そういえば、あれは十日くらい前だったかな。

 十日前は……まだ私がクラスでこんな感じじゃなかった。

 休み時間、前の席の子と野崎さんが廊下で話していた。

 「皆川先生って藤之宮駅の近くのアパートに住んでるんだって」

 「そうなんだ。大学が近くだから、そのまま通ってるって感じ」

 「アパートは結構古いらしいよ……駅から……」

 そんな何気ない会話を、私はすぐ近くで何となく耳にしていた。

 アパートの名前は分からないけど、駅から坂を上った先にある二階建ての古い建物だとすれば、大体見当がつく。

 あの時はただの噂だと思ってたけど……もし本当なら。

 ケシゴムを握る手に力が入る。

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