私の居場所は、先生の隣!

今なら行ける。
会って、何を話すかなんて決めてないけど……。
私は立ち上がり、スマホと財布だけを握りしめる。
もう、居場所はない。
階段をかけおりる。
「陽菜、こんな時間にどこに行くの?」
「友達の所! 今日、泊まるから!」
「え⁉ 待ちなさい!……陽菜!」
お母さんを振り切って外に出た。
日が暮れ始めた街の一人歩き。
近くの駅に言って、そこから藤之宮駅までに十分ぐらい。
暗くなってるけど……。何とかなる。
ならなくたって、もうどうでもいいや。
駅の改札を通って、電車を待つ。
学校が近いから普段は使わない。
景色も経験もなにもかもが初めて。
その興奮が、自暴自棄な心を押さえているみたい。
電車の窓から流れる景色をぼうっと眺めると、あっと言う間に、先生のいる藤之宮駅に到着。
改札を抜け、駅前の坂を登る。
街灯が途切れがちになり、あたりが静かになっていく。
そのたびに、足が少しだけ速くなる。
息を切らせながら、やっと見えてきた二階建てのアパート。
錆びた階段と、木製の手すり。
「…………」
私は手前で立ち止まり、深呼吸を一つ。
ここから先へ進めば……。
部屋番号までは分からない。私はアパートの郵便受けのあるボックスから手がかりを探した。
その中の一つに、『H、M』というのを見つけた。
遥、皆川……多分、ここがそう。部屋は二階の一番奥。
外階段を上がっていく。
カンカン……という鉄の音が響く。
「…………ここ?」
部屋のドアの前に立った。電気は……ついてるのかどうかは分からない。
呼び鈴はないみたいなので、手の甲をドアにつける。
深呼吸してから、ドアを叩いた。
「…………」
返事がない。
何回も叩いた。
けれど、やっぱり返事はない。
耳を澄ませても、中からは物音ひとつしなかった。
「……いない、の……?」
力が抜けて、ドアから手を離す。
このまま帰れば、またあの息苦しい教室と家に戻るだけ。
帰る? どうして?