私の居場所は、先生の隣!
 「……おじゃまします」

 そう言う私の言葉が何となく間抜けに聞こえる。

 先生は先に奥に行って、電気をつけた。

 何度か点滅して光が広がる。

 部屋の中は生活感が全くない。

 普通は食器とかクローゼットとか、そういうものがあるはずだけど、畳のその部屋にあるのは、小さなテーブルとあと、紐で束ねら

 れてる何かの書類の山。隅に、畳まれた布団。

 先生はまだ大学生のはずだけど、これが一般的な大学生の部屋なの?

 「…………」

 あたりを見渡してると、

 「俺の部屋の観察に来たのか?」

 「違うんです……」

 先生の声は静かだけど、なぜか抗えないような独特の響きを持ってる。

 「……じゃあ、何をしに来た?」

 正面から問いかけられて、私は言葉に詰まった。

 ただ、あのまま家や学校に戻るのが嫌で、逃げ場を探して……気づいたら、ここまで来ていた。

 「……分かりません。ただ……」

 視線を落として、小さな声で続ける。

 「どこにも、行く場所がなかったんです」

 しばらく沈黙があった。

 時計の針の音がやけに大きく響く。

 やがて、皆川先生は息を吐くように椅子へ腰を下ろした。

 「……そこに座れ」

 指さされたのは、部屋の隅の布団の前。

 私は言われるまま正座し、膝の上で手を組んだ。

 「学校で何かあったんだな」

 「…………」 

 やっぱり、分かってるんだ。

 私は唇を噛みしめたまま、返事をしない。
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