私の居場所は、先生の隣!
 「何処にも……ないんです」

 「…………」

 「私が‥‥私の‥‥」

 「…………」

 先生は肩を落とした。心無しか険しかった顔が少し緩んでる。

 「それは辛いな」

 「…………」

 え? 今ので分かったの?

 まさか、まだ何も言ってないのに。

 「まして、中学生は、世界が限定的だ。そこに居場所がなければ、もう詰んでしまう」

 「…………」

 それからしばらく、部屋の中には何の音もなかった。

 窓の外を通る車のエンジン音が、遠くにぼんやりと響く。

 私は足元の畳を見つめたまま、指先で織り目をなぞっていた。

 黙っていても、追い出されない。

 それだけで、少しだけ息がしやすくなる。

 「……森川」

 名前を呼ばれて顔を上げると、先生は湯飲みを机に置き、こちらに向き直っていた。

 「お前、授業のとき……やけに後ろを気にしてただろう」

 「……え」

 「俺が座ってたからか?」

 「……そう、です。あと……その、助けてもらったのも」

 言い終わると、先生は小さく片眉を上げた。

 「あれくらいで礼を言われる筋合いはない」

 淡々とした声。だけど、ほんの一瞬、口元が緩んだように見えた。

 「……でも、あの時……私、すごく……」

 そこまで言ったところで、言葉が詰まる。

 何を言えばいいのか分からない。

 助かった、とか、嬉しかった、とか……そんな単語じゃ足りない。

 「…………」

 どう言ったらいいのか分からない。

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