私の居場所は、先生の隣!
 「……先生も、居場所、なかったんですね」
 
 自分でも驚くほど、小さくて震えた声だった。

 先生の視線が、ゆっくりと私に向けられる。

 「……ああ。そうだな」

 「……私も、そうです。学校にも家にも……どこにも、私の場所なんてない」

 言葉にした途端、胸の奥のつかえが少しだけ崩れた。

 先生は何も言わなかった。ただ、その黒い瞳がほんの少しだけ柔らいだ気がした。

 「……だから、こうして話してるのは……ちょっと変な感じですけど……嬉しいです」

 「…………ふ」

 その瞬間、先生の口元がかすかに動いた。

 笑ったのか、それともただ息を吐いただけなのか……分からなかったけれど、

 その表情は、さっきまでの無機質な顔とは違って見えた。

 「……お前、意外と図太いな」

 「え?」

 「人の部屋に押しかけて、そんなこと言えるんだからな」

 淡々とした声の奥に、微かな冗談めいた響きがあった。

 初めて先生の笑った顔を見た。

 全然冷たくなんてない。

 優しくて、見てると私も笑顔になってくる。

 「先生と私は同士ですね」

 「お前は、何を言ってるんだ」

 不機嫌そうに言ってるけど、実はそうでもない。

 先生の心が今は良く分かる。

 「……で、お前はどうするんだ。この先」

 「……分かりません」

 答えはそれしかなかった。

 学校にも、家にも……帰っても居場所なんてない。

 「じゃあ、ここに住むか?」

 「え⁉ いいんですか⁈」

 「冗談だ」

 「…………」

 先生は冗談のつもりだんだろうけど、私はそれが良かった。

 でも私も笑いが込み上げてきた。

 「とにかく、今日は遅いからもう帰れ」

 「うん」

 びっくりするほど素直な返事を返した。

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