亡国の聖女は氷帝に溺愛される
「そのレイチェルって女に会わせて」
「あの女も聖女なのか?」
「それは分からない。だけどイージスの聖女は、あんたが拾ったルーチェで間違いないよ。五年間二人の側にいた、僕が証人だ」
ノエルはきゅっと唇を引き結ぶと、ヴィルジールの執務机に両手をついた。
「イージスの聖女は、たったひとり。唯一無二の力を持っていた、ルーチェだけだ」
霧を払うような、強く澄んだ声からは、嘘偽りは一切感じられない。
ヴィルジールは息を呑んでノエルを見つめた。
魔法大国・マーズが誇る神童であり、最年少で大魔法使いの座に着いたノエル。神秘的なヴェールに包まれた君主が治める国・イージスの聖王から祝福を受け、聖女のこともよく知る彼がそう言うならば、間違いないのだろう。
ヴィルジールは立ち上がり、ノエルと向き直った。
「会うのは構わないが、もう一つだけ聞きたいことがある。──聖女の剣というものに、聞き覚えはあるか?」
「聖女の剣?」
眉を顰めるノエルに、ヴィルジールは深く頷いた。
「ここ数日、夢の中である女が現れ、不思議なものを見た。どうやらその女はソレイユという名の聖女で、祖先と盟約を交わしたという」
濡羽色の艶やかな髪と、濡れた赤色の唇を思い出す。何故かルーチェと重なって見えたことも。
「聖女の剣というものは知らない。だけど、ソレイユという名には憶えがある」
ノエルは口元に手を当てながら、静かな声音で告げる。
「聖女ソレイユは、イージス神聖王国のはじまりの聖女だ」
ヴィルジールは一瞬息を止め、抱いた驚きを鎮めてからまた息を吸った。
「あの女も聖女なのか?」
「それは分からない。だけどイージスの聖女は、あんたが拾ったルーチェで間違いないよ。五年間二人の側にいた、僕が証人だ」
ノエルはきゅっと唇を引き結ぶと、ヴィルジールの執務机に両手をついた。
「イージスの聖女は、たったひとり。唯一無二の力を持っていた、ルーチェだけだ」
霧を払うような、強く澄んだ声からは、嘘偽りは一切感じられない。
ヴィルジールは息を呑んでノエルを見つめた。
魔法大国・マーズが誇る神童であり、最年少で大魔法使いの座に着いたノエル。神秘的なヴェールに包まれた君主が治める国・イージスの聖王から祝福を受け、聖女のこともよく知る彼がそう言うならば、間違いないのだろう。
ヴィルジールは立ち上がり、ノエルと向き直った。
「会うのは構わないが、もう一つだけ聞きたいことがある。──聖女の剣というものに、聞き覚えはあるか?」
「聖女の剣?」
眉を顰めるノエルに、ヴィルジールは深く頷いた。
「ここ数日、夢の中である女が現れ、不思議なものを見た。どうやらその女はソレイユという名の聖女で、祖先と盟約を交わしたという」
濡羽色の艶やかな髪と、濡れた赤色の唇を思い出す。何故かルーチェと重なって見えたことも。
「聖女の剣というものは知らない。だけど、ソレイユという名には憶えがある」
ノエルは口元に手を当てながら、静かな声音で告げる。
「聖女ソレイユは、イージス神聖王国のはじまりの聖女だ」
ヴィルジールは一瞬息を止め、抱いた驚きを鎮めてからまた息を吸った。