亡国の聖女は氷帝に溺愛される


 ルーチェが再びヴィルジールと会ったのは、あの日から三日後のことだった。

「お招きありがとうございます」

 空色のサテンロングドレスが揺れる。光沢があり、なめらかな肌触りが特徴的なこのドレスは、ヴィルジールと城下に行った時に仕立ててもらったものだ。

 何を着たらいいのか、何が似合うのか分からず困惑していたルーチェに、ヴィルジールが自らが布を選び、デザインを決めてくれた。

 ルーチェは指先でドレスの裾を掴み、すっかり馴染んだお辞儀を披露した。

「その色も悪くない」

 ヴィルジールはルーチェの肩に一度だけ触れた後、左肘を差し出してきた。そこへ右手を添えると、彼は居館へと向かって歩き出す。その足取りは、今日一日の疲れが溜まっているのか、それともルーチェに合わせているのか、とてもゆったりとしていた。

「セシル様は領地に戻られたのですか?」

 ワイングラスを掲げてから、ふたりは会話を始めた。

 ルーチェがヴィルジールの体調を気遣う内容から始まり、ヴィルジールの口からは今日は料理長が腕を奮ったことや、新人の料理人が緊張のあまりに皿を何枚も割ったことが出てきて、ルーチェは笑みを零していた。
< 139 / 283 >

この作品をシェア

pagetop