亡国の聖女は氷帝に溺愛される
「わたしも同じです。ヴィルジールさま」
「同じ? 何がだ」
至極真面目な顔つきでいるヴィルジールに、ルーチェは笑いかける。
「知りたいから、お尋ねしたのです。ヴィルジールさまのことが」
名前と居場所をくれ、この国の景色を見せてくれた人。なんてことのないような顔で、ルーチェの胸をいっぱいに膨れ上がらせてみせた彼のことが知りたいと、ルーチェは思っているのだ。
彼のことを知れれば、いつか恩返しをする時──怒らせてしまうようなものを贈ることはないだろうから。
ヴィルジールは少しの間黙ってルーチェを見ていたが、やがてうなずいてフォークを置いた。
「ワインと、柔らかい肉が好きだ。色は……分からないが、派手なものは好きじゃない」
ルーチェは頷きながら、切り分けたセーブの実を頬張る。食感は葡萄を皮ごと食べた時に似ているが、味は酸味と甘味のバランスが絶妙で、とても好きな味だった。
「花は、ウィンクルムが好きだ」
「ウィンクルム?」
それはどんな花かと尋ねるルーチェに、ヴィルジールはそれ以上のことを語らなかった。
食事を終えると、ルーチェはいつかの日のようにテラスへ連れ出された。彼はジャケットの内側から長細い箱を取り出し、ルーチェの目の前で開けてみせる。
「受け取れ」
蓋を開けて差し出されたそれには、鮮やかな青色の宝石のペンダントが入っていた。
声ひとつ発せずに、宝石に見入っているルーチェを見下ろすヴィルジールの瞳には、柔らかい光が滲んでいる。
「特別に作らせたものだ。ちょっとした仕掛けをしてある」
「仕掛け、ですか?」
「ああ。その時が来たら分かる」
ヴィルジールはペンダントを取り出すと、ルーチェの背後に回り、慣れない手つきでチェーンを繋いでいった。
「……ありがとうございますっ……」
ルーチェはヴィルジールを振り返り、胸元で輝く楕円形の青い宝石に触れながら、彼の顔を見上げる。
名前を贈られた時とは違う気持ちが、胸いっぱいに広がっている。今この瞬間がとても幸せでたまらなくて、くるしかった。
「同じ? 何がだ」
至極真面目な顔つきでいるヴィルジールに、ルーチェは笑いかける。
「知りたいから、お尋ねしたのです。ヴィルジールさまのことが」
名前と居場所をくれ、この国の景色を見せてくれた人。なんてことのないような顔で、ルーチェの胸をいっぱいに膨れ上がらせてみせた彼のことが知りたいと、ルーチェは思っているのだ。
彼のことを知れれば、いつか恩返しをする時──怒らせてしまうようなものを贈ることはないだろうから。
ヴィルジールは少しの間黙ってルーチェを見ていたが、やがてうなずいてフォークを置いた。
「ワインと、柔らかい肉が好きだ。色は……分からないが、派手なものは好きじゃない」
ルーチェは頷きながら、切り分けたセーブの実を頬張る。食感は葡萄を皮ごと食べた時に似ているが、味は酸味と甘味のバランスが絶妙で、とても好きな味だった。
「花は、ウィンクルムが好きだ」
「ウィンクルム?」
それはどんな花かと尋ねるルーチェに、ヴィルジールはそれ以上のことを語らなかった。
食事を終えると、ルーチェはいつかの日のようにテラスへ連れ出された。彼はジャケットの内側から長細い箱を取り出し、ルーチェの目の前で開けてみせる。
「受け取れ」
蓋を開けて差し出されたそれには、鮮やかな青色の宝石のペンダントが入っていた。
声ひとつ発せずに、宝石に見入っているルーチェを見下ろすヴィルジールの瞳には、柔らかい光が滲んでいる。
「特別に作らせたものだ。ちょっとした仕掛けをしてある」
「仕掛け、ですか?」
「ああ。その時が来たら分かる」
ヴィルジールはペンダントを取り出すと、ルーチェの背後に回り、慣れない手つきでチェーンを繋いでいった。
「……ありがとうございますっ……」
ルーチェはヴィルジールを振り返り、胸元で輝く楕円形の青い宝石に触れながら、彼の顔を見上げる。
名前を贈られた時とは違う気持ちが、胸いっぱいに広がっている。今この瞬間がとても幸せでたまらなくて、くるしかった。