亡国の聖女は氷帝に溺愛される
 ルーチェは玄関ホールでヴィルジールと別れ、迎えにきてくれたセルカとともに馬車に乗り込んだ。城の中心部である居館からソレイユ宮までは、ルーチェの足ではかなりの時間がかかるからだ。

「皇帝陛下との夕食会はいかがでしたか?」

「色々な話をお聞きすることができて、楽しかったです」

 笑って答えるルーチェに、セルカは微笑み返す。

「素敵なひと時になられたようで、ようございました」

 ルーチェははにかみながら頷き、胸元のペンダントに指を添えた。目を落とすと、小窓から差し込む月明かりを受けて、神秘的な輝きを放っていた。

 ペンダントを贈った理由は分からないが、仕掛けがあると言っていた。いつの日のためなのかは分からないが、その日を見据えて作らせたのだろう。

(……頂いてばかりだわ) 

 ルーチェはヴィルジールからの贈り物を、指を折って数えた。名前、住居、青色のドレス、花市で買ってもらったお菓子と、何着ものドレス。直接ではないが、クローゼットに入っているその他の衣装や部屋の調度品も、彼の指示によって用意されたものだ。

 とてもとても、両手の指だけでは数えきれない。

「セルカさん。ウィンクルムの花をご存知ですか?」

「存じております。確か、城の庭園に一年中咲いていたと思いますが」

 ルーチェは瞳を輝かせながら、セルカの手を取った。

「明日、私をそこへ連れて行ってください……!」

 セルカはルーチェからの申し出を不思議に思いながらも、躊躇うことなく頷いた。
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