兄弟の溺愛に堕ちて

第2章 誕生日

そして、私の誕生日は静かに訪れた。

朝のオフィスに入ると、珍しく一真さんがすでに席についていた。

「おはようございます。今日は早いですね。」

声をかけると、一真さんは柔らかく微笑んで、肩をすくめた。

「うん、今日ぐらいはね。」

そう言ってカバンを探ると、小さな箱を取り出した。

「誕生日、おめでとう。」

差し出されたその箱に、私は思わず目を見開いた。

「……私に?」
「うん。」

差し出されたものを受け取ると、手が震えた。

いつもは「おめでとう」の言葉だけ。それで十分嬉しかった。

でも、今日は違う。目の前にあるのは、リボンで飾られた小さな箱。

「開けてみて。」

一真さんの声は、いつもより少し低くて優しい。

震える指でリボンをほどき、箱を開けると、中にはシンプルで上品なペンダントが輝いていた。

胸の奥が熱くなる。
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