兄弟の溺愛に堕ちて
「ありがとう。」と小さな声が返る。

泡を含んだ手を滑らせると、思ったよりも引き締まった背中の感触に指先が驚いた。

肩から腰にかけて、無駄のない筋肉がきれいに浮き上がっている。

――いつもスーツ越しにしか見ていなかったのに。

背中をなぞるたび、心臓が痛いほど跳ねた。

「美咲の背中も洗ってあげる。」
「うん……」

私がそっと背中を預けると、蓮さんの手が泡を乗せてなぞっていく。

くすぐったい感触に肩をすくめた瞬間、背中にふいに柔らかな温もりが触れた。

「……っ」

それは手ではなく、唇だった。

チュッチュッと細かい音を立てながら、背骨に沿って何度も口づけられる。

石けんの泡と熱い唇が交わり、そこからじんわりと甘い痺れが広がっていく。

「ん……あ……」

思わず声が零れて、私は床に手をついた。

ただ背中を洗われているだけなのに、もう胸の奥が疼いて仕方ない。
< 51 / 106 >

この作品をシェア

pagetop