兄弟の溺愛に堕ちて
胸の奥がズキッと裂けたように痛む。

私の知っている蓮さんの優しさは、全部嘘だったの……?

「美咲……お前は騙されているんだ。」

一真さんの声が震えていた。怒りなのか、焦りなのか、それとも……愛なのか。

そして駐車場に響くヒールの音。

助手席に押し込まれ、シートベルトを閉められる音がやけに大きく聞こえた。

「美咲。」

低く呼ばれた名前に、心臓が跳ねる。

ハンドルに手を置いたまま、一真さんは真っ直ぐに射抜くような視線を投げかけてきた。

「今日、はっきり分かったことがある。」

「……な、何ですか?」

息を詰める私に、彼の声が落ちる。

「俺の隣には、美咲しかいらない。」

ビクン、と体が震えた。

今まで冷静で隙のなかった彼が、全身で私を見ている。

その目には、有能な社長としての冷徹さではなく、一人の男の熱が宿っていた。
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