赤いフードの偽物姫と黒いフードの人外陛下〜敗戦したので売国しに乗り込んだら、何故か溺愛生活始まりました〜
 リープ病を発症し、あとはもう死を待つだけという段階まで進んでいた私が"生きたい"と未来を望んでから3年。
 私は今もセルヴィス様の側で生きている。
 この3年、本当に色々あった。
 イザベラと入れ替わっていた点については、

『王女を寄越せとは言ったが第一王女と指定した覚えはない』

 というセルヴィス様の一言と、

『王女の名前の間違いについては目を瞑ってやるから今すぐ訂正しろ』

 という要求で私の存在が公に明かされ事実上不問になった。
 クローゼアには王女が一人しかいないというのは有名な話だったし、クローゼア王が実権を握ったままだったならきっと通らなかっただろうけれど。
 クローゼアへの襲撃を把握していたイザベラが王を守るという名目で王城から父を王領に逃し全権を一時的に預かっていたので、話し合いは思いの外スムーズに進んだ。

 そのまま()の居ぬ間に売国しようと思ったのに、

『リィルが本当に望んでいるのは、売国ではないだろう』

 と、セルヴィス様に一蹴され代わりに提案されたのは同盟国としての平和協定だった。
 セルヴィス様が取り出したのは私が綴った植物園の活用方法。
 オゥルディ帝国で植物園を見た時から思っていた。
 クローゼアにはサーシャ先生をはじめとした元カルーテ国民には薬学に優れた人材が多くいる。
 彼らを帝国に派遣できれば新たな薬の研究が可能だ、と。
 それをクローゼアで活用できずにいた件の貿易港を拠点に他国に輸出すれば十分利益を見込める。
 それは少しずつ実現していき、その度にクローゼアと帝国のわだかまりも解けていった。
 一時は不吉とされていた双子を隠していた王家の闇を皮切りに公爵家や王臣の不祥事がこれでもかというばかりに公表され、民意は王家から離れかけたけど。
 帝国と友好な関係を築き敗戦後荒れていた国を立て直したイザベラへの国民の支持は高く、ついには先代を王位から退かせイザベラが女王として立つことになった。
 先代を退かせるために、

『印象操作が必要ね!』

 と嬉々としてイザベラが企画したのは演劇で。
 クローゼアとオゥルディ帝国で、双子の王女に降りかかった悲劇と冷酷な皇帝の恋物語が上映された。
 それはイザベラの目論見通り人々の心を掴んだけれど。

『さすがに嘘が過ぎない!?』

 と突っ込んだ私に、

『あら、リィルったら。本当の話をちょーっと盛っただけでしょ? 8割くらい』

 しれっと言ってのけたイザベラはやはり女優だとしみじみ思う。

 リープ病の治療方法の模索。それが一番難航したけれど。
 クローゼアで隠していた鉱山の開発が進んだことで魔力を貯めることのできる鉱石が見つかったことで事態が好転した。
 その珍しい鉱石に興味を示した魔塔の協力が得られ、病巣のみに的確に必要な魔力量を当て毒を毒で打ち消す治療法が開発された。
 そのおかげで今も私は生きている。
 振り返ればあっという間に月日は流れていったけど。
 私が痛みに苦しみ眠れない夜も。
 嬉しいことがあった日の朝も。
 私の側にはいつもセルヴィス様がいてくれた。

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