アバター★ミー 〜#スマホアプリで最高の私を手に入れる!〜
Scroll-12:向上心
「明日からとうとう、期末試験が始まります。ということで、今日が最後の勉強会になります。——で、いいよな? 試験中もやる?」
玲央くんの言葉に、皆が首を横に振る。ということで、どうやら今日が最後の勉強会になるようだ。最終日は勉強する教科は自由。各々が、苦手な教科の勉強を始めた。
黙々と勉強する中、時々誰かが誰かに質問をする。私も既に、何度か質問を受けている。頻度で言うと、莉奈ちゃんが一番多い。そして英語の質問をするのは、玲央くんが一番多かった。
私は玲央くんの質問と、楓の解答に耳を傾ける。楓のネイティブの発音を聞くのが心地いいのだ。
そういえば今日は、【頭の良さ】を10にセットしている。皆が一生懸命に勉強をしている中、あまりに上げるのは心苦しかったのだ。それでもズルをしていることには、変わりないのだけど……
「じゃ、今日はこれくらいにしよっか! 質問出来てない人とかいないか?」
「そんなのあったら、とっくにしてるよ。大丈夫、大丈夫」
淡々と答える莉奈ちゃんに、楓がクスクスと笑う。
そんな和やかな雰囲気の中、私は気になっていることがあった。
それは、向かいの席からジッとこちらを見ている、高校生のグループがいるということだ。いかにもガラの悪そうな、3人組の男子。彼らが見ているのは、きっと莉奈ちゃんだと思う。席の角度などもあり、玲央くんたちは彼らの存在に気付いていないはずだ。
そして私たちが席を立つと、彼らも少し遅れて席を立った。
ど……どうしよう、絡まれたりしたら……
そしてその嫌な予感は、的中してしまった。
***
「ちょっとごめんね、少しだけお話させてもらっていい?」
後ろをついてきていた高校生は、店を少し離れた所で声をかけてきた。
「なっ……なんですか、一体?」
「いや、お兄ちゃんじゃなくて、そこの彼女に話があって。——ちょっといい? そこの彼女」
玲央くんより背の高い男は、莉奈ちゃんを手招きした。金髪に、無数のピアス。背が高いだけでなく、身体つきもガッチリとしている。
「なんの用?」
その莉奈ちゃんをかばうように、楓が男の前に立った。その声は凛としていて、彼らに怯んでいる様子はない。
「いや、キミじゃなくて、奥の小さい子に言ってんの」
「だから、なんの用って聞いてんのよ?」
「ちっ、面倒だなあ。俺は彼女に用が——」
バシッ!!
莉奈ちゃんへ伸ばそうとした男の手を、楓が拳で弾き飛ばした。
「手だすなよっ!!」
「いっ、痛えなっ!! 手だしてるの、お前じゃねえか!!」
「お前がこの子に、手を伸ばしたからだろうが!!」
「やっ、やめた方がいいよ! この子は空手の黒帯で、全国大会にも出てるんだからっ!!」
莉奈ちゃんが、楓に隠れるようにしてそう言った。——って、空手で全国大会……? 楓は知れば知るほど、面白い事実が出てくる。
「こっ、こいつ……」
「庄司、もうやめとけ。女と喧嘩しても、良いことなんてひとつもねえよ。勝っても負けても」
残りの2人が店の方へと戻っていくと、庄司と呼ばれた男も、仕方なさそうに戻っていった。
***
最寄り駅まであと少し。そんなタイミングになって、やっと男子たちが口を開いた。
「なあ、玲央……情けなかったな、俺たち。仲間が絡まれてんのに、何も言えなくて」
「マジでそれ。久しぶりにガッツリ落ち込んだよ。——にしても、楓カッコよかったな。しびれたよ、マジで」
隣にいる翔くんも「ホントそれ」と頷いている。
「あ、そうそう。莉奈にはいつも言ってるんだけど、私が出たのって県大会だからね? 何度言っても全国大会って言っちゃうんだけど、この子」
「アハハ、ごめんごめん……また間違っちゃうかもだけど……」
そう言って莉奈ちゃんは頭を掻いた。フフフ、こんな莉奈ちゃんもカワイイ。
「で、俺考えてたんだけどさ……」
「ちょ、ちょっと待ってくれ翔! 俺が今、考えてることと同じような気がする!!」
「嘘つけ。そんな偶然あるかよ」
「い、いや、マジだって! 何かを始めたいんだろ? で、それを始めるには、この辺だったら駅前だ。どうだ!?」
「ま、まあ、この辺りではそこしかないな。——それで?」
「2階の窓に張り紙がしてある。体験コース募集中と!」
「あっ、当たってる! じゃあ、せーので答えてみるか! せーのっ!!」
「ボクシングジムに行く!!」
2人の声がキレイに重なった瞬間、彼らは笑顔でハイタッチをした。
現状に満足することなく、常に向上心を持っている彼ら。この輪の中に入ることが出来て、本当に良かったと思った瞬間だった。
玲央くんの言葉に、皆が首を横に振る。ということで、どうやら今日が最後の勉強会になるようだ。最終日は勉強する教科は自由。各々が、苦手な教科の勉強を始めた。
黙々と勉強する中、時々誰かが誰かに質問をする。私も既に、何度か質問を受けている。頻度で言うと、莉奈ちゃんが一番多い。そして英語の質問をするのは、玲央くんが一番多かった。
私は玲央くんの質問と、楓の解答に耳を傾ける。楓のネイティブの発音を聞くのが心地いいのだ。
そういえば今日は、【頭の良さ】を10にセットしている。皆が一生懸命に勉強をしている中、あまりに上げるのは心苦しかったのだ。それでもズルをしていることには、変わりないのだけど……
「じゃ、今日はこれくらいにしよっか! 質問出来てない人とかいないか?」
「そんなのあったら、とっくにしてるよ。大丈夫、大丈夫」
淡々と答える莉奈ちゃんに、楓がクスクスと笑う。
そんな和やかな雰囲気の中、私は気になっていることがあった。
それは、向かいの席からジッとこちらを見ている、高校生のグループがいるということだ。いかにもガラの悪そうな、3人組の男子。彼らが見ているのは、きっと莉奈ちゃんだと思う。席の角度などもあり、玲央くんたちは彼らの存在に気付いていないはずだ。
そして私たちが席を立つと、彼らも少し遅れて席を立った。
ど……どうしよう、絡まれたりしたら……
そしてその嫌な予感は、的中してしまった。
***
「ちょっとごめんね、少しだけお話させてもらっていい?」
後ろをついてきていた高校生は、店を少し離れた所で声をかけてきた。
「なっ……なんですか、一体?」
「いや、お兄ちゃんじゃなくて、そこの彼女に話があって。——ちょっといい? そこの彼女」
玲央くんより背の高い男は、莉奈ちゃんを手招きした。金髪に、無数のピアス。背が高いだけでなく、身体つきもガッチリとしている。
「なんの用?」
その莉奈ちゃんをかばうように、楓が男の前に立った。その声は凛としていて、彼らに怯んでいる様子はない。
「いや、キミじゃなくて、奥の小さい子に言ってんの」
「だから、なんの用って聞いてんのよ?」
「ちっ、面倒だなあ。俺は彼女に用が——」
バシッ!!
莉奈ちゃんへ伸ばそうとした男の手を、楓が拳で弾き飛ばした。
「手だすなよっ!!」
「いっ、痛えなっ!! 手だしてるの、お前じゃねえか!!」
「お前がこの子に、手を伸ばしたからだろうが!!」
「やっ、やめた方がいいよ! この子は空手の黒帯で、全国大会にも出てるんだからっ!!」
莉奈ちゃんが、楓に隠れるようにしてそう言った。——って、空手で全国大会……? 楓は知れば知るほど、面白い事実が出てくる。
「こっ、こいつ……」
「庄司、もうやめとけ。女と喧嘩しても、良いことなんてひとつもねえよ。勝っても負けても」
残りの2人が店の方へと戻っていくと、庄司と呼ばれた男も、仕方なさそうに戻っていった。
***
最寄り駅まであと少し。そんなタイミングになって、やっと男子たちが口を開いた。
「なあ、玲央……情けなかったな、俺たち。仲間が絡まれてんのに、何も言えなくて」
「マジでそれ。久しぶりにガッツリ落ち込んだよ。——にしても、楓カッコよかったな。しびれたよ、マジで」
隣にいる翔くんも「ホントそれ」と頷いている。
「あ、そうそう。莉奈にはいつも言ってるんだけど、私が出たのって県大会だからね? 何度言っても全国大会って言っちゃうんだけど、この子」
「アハハ、ごめんごめん……また間違っちゃうかもだけど……」
そう言って莉奈ちゃんは頭を掻いた。フフフ、こんな莉奈ちゃんもカワイイ。
「で、俺考えてたんだけどさ……」
「ちょ、ちょっと待ってくれ翔! 俺が今、考えてることと同じような気がする!!」
「嘘つけ。そんな偶然あるかよ」
「い、いや、マジだって! 何かを始めたいんだろ? で、それを始めるには、この辺だったら駅前だ。どうだ!?」
「ま、まあ、この辺りではそこしかないな。——それで?」
「2階の窓に張り紙がしてある。体験コース募集中と!」
「あっ、当たってる! じゃあ、せーので答えてみるか! せーのっ!!」
「ボクシングジムに行く!!」
2人の声がキレイに重なった瞬間、彼らは笑顔でハイタッチをした。
現状に満足することなく、常に向上心を持っている彼ら。この輪の中に入ることが出来て、本当に良かったと思った瞬間だった。