アバター★ミー 〜#スマホアプリで最高の私を手に入れる!〜

Scroll-24:みんな変わってゆく

 今日は二学期の始業式。

 アバター★ミーは大阪に行った時の数値、【ルックス】70で、当分固定しておくことにした。また体重が減って、「病院に行きなさい!」なんて言われたら面倒だと思ったからだ。

 それに【ルックス】70でも、私は充分にカワイイ気がしてきている。

 大阪で撮ってもらった『Snaps!(スナップス!)』のサイトでは、私が一番上に掲載されているし、その画像への“いいね!”も毎日のように伸びているからだ。

 琴音が来るまで、あと何分くらいだろう……?

 そう思って時計を見上げた瞬間、ラインが鳴った。

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ごめん、志帆!
朝バタバタしてたら、迎えに行けなくなっちゃった! 日和はいつもどおり、そっちに行くと思うから、一緒に学校行ってあげてね。
渡したいものがあるから、帰りは教室で待ってて!!
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 琴音からだった。

 なんだろう、この感じ……琴音と仲が良かった時のラインの雰囲気だ。しかも琴音は、私に渡したいものがあるらしい。そうだ! その時に、私の大阪土産と交換しよう。


「おはよう。——えっ!!」

 迎えに来てくれた小池さんを見て、私は声を上げた。

「コンタクトにしたの小池さん!? メガネも可愛かったけど、コンタクトもいいじゃん!!」

「お、驚きたいのは私の方です! 相川さん、めちゃくちゃ痩せたんですか!? すごくキレイになってる!! しかも髪型もめっちゃカワイイし!!」

「あ、ありがとう小池さん……めちゃくちゃ褒めてくれて。——にしても、お互いイメチェンして新学期迎えるのって、なんかワクワクするね!」

 私がそう言うと、小池さんは「本当に!」と笑顔で答えてくれた。


「あれから漫画って、なにか進展あったの?」

「はい! 沢山描いて、公募に応募しまくりましたよ。——あ! あとですね、一つだけ初めての試みをやってみたんです」

「初めての試みって?」

「公募の内の一つだけなんですけど、琴音さんにキャラクターデザイン描いてもらったんです。琴音さん、相川さんの感想聞きたがってたなあ。——あ! これ、私から言わない方が良かったかもですね」

 そう言って小池さんは“しまった”という顔をした。

「フフフ、大丈夫だよ小池さん。琴音はそんなこと、気にしたりしないと思う。——にしても、私も早く見てみたいな、2人のコラボ漫画」

 小池さんは「ぜひ!」と言って、満面の笑みを浮かべた。


***


 私が教室に入ると、教室はシーンと静まり返ってしまった。

 私のあまりの変わり様に、みんな驚いてるんだと思う。

「し、志帆か……? めっちゃ痩せたな……一体、何キロ痩せたんだ……?」

「じゅ……10キロちょっとかな……痩せすぎて、怖かったりする……?」

「なっ、何言ってんだ! そんなことねえよ! ——逆に全然イケてる。髪の毛だって、超オシャレだし」

 玲央くんは心底驚いたような表情でそう言った。他の生徒たちも、玲央くんの言葉に頷いている。

「やっぱ、『スナップス!』に載ってたSHIHOって、志帆のことだったの!? いつの間に、大阪なんて行ってたのよ!!」

「え、えーと……大阪のおばあちゃん家に一週間ほど行ってたの。その時にミナミをウロウロしてたら、声をかけられて」

 さすが莉奈ちゃん。あの手のサイトはちゃんと見てるんだ。

 それにしても、周りのみんながキラキラとした目で私を見てる。教室のみんなが、私に注目してる。

 も、もしかして、私が求めていたのって、こういうこと……?


 予鈴が鳴り、ガタガタと生徒たちが席につく。しかし、琴音はまだ来ていない。この時間にまだ教室に来ていないなんて、今までの琴音には無かったことだ。

 そして担任の川瀬先生が入ってきたタイミングで、やっと琴音が教室に入ってきた。

「あら、白石さんがこんな時間に来るなんて珍しいわね。はい、さっさと席について」

 琴音は慌てるようにして自分の席へと向かう。私と目があった琴音は、目を真ん丸にして私に小さく手を振った。きっと、私の変わり様に驚いたのだろう。

 っていうか——

 琴音も痩せた——?


***


 川瀬先生が新学期の挨拶を簡単に済ませると、私たち生徒は教室を出た。体育館で始業式を行うためだ。

 体育館への移動が始まると、すぐに莉奈ちゃんたちが側にやってきた。

「そのヘアスタイル、大阪でやってきたの? もしかして、有名なヘアサロンだったりして?」

「全然全然! 私のおばあちゃん、美容院やってるの。そこでお休みの日に、ちょこちょこってやってもらって」

「えー、めっちゃいいじゃん!! 近所なら私も絶対通ってるのに!!」

 莉奈ちゃんは、ピンク色に染まった私の髪の毛をサラサラと触った。その隣にいた翔くんは、「今度は俺も色変えてみようかな」なんて言っている。

 憧れの目で見ていた玲央くんや莉奈ちゃんたちが、こぞって私のもとに集まってくる。

 そしてそんな私たちを、行き交う同級生や下級生たちが、憧れの眼差しで見つめてくる。

 ん? 私たち——?

 いや、もしかしたら今一番目立っているのは、私なのかもしれない。

 そして、そんな私の絶頂期は、あとしばらくで終わりを迎えようとしていた。
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